「トカゲは爬虫類の仲間。このくらいは知っているけれど・・・。」トカゲ飼育のスタートラインに立ったばかりの人の多くは、トカゲに対しての知識を問われてもこのような回答になることが多いでしょう。
初めはこのくらいの知識であって当然かもしれませんが、これからトカゲ飼育を行なっていくのであれば、まずはトカゲのことを知らなければ始まりません。
トカゲについて何も知らないまま、トカゲ飼育を始めようとすることは非常に無謀な事と言えますので、まずはトカゲとはどのような生き物で、どのような特徴を持ち合わせているのか。
そしてどのような環境を好むのか、どのような餌を好むのかと少しずつでもトカゲのことを知っていくことがトカゲ飼育を成功させるための秘訣と言えます。
その為に少しずつでもトカゲについて理解を深めて行きましょう。
分類学上のトカゲとは
まず、分類学上の話から始めるとトカゲは爬虫類の中でも有鱗目に属し、親戚にはヘビなどが属しています。
種類にもよりますが、トカゲの中には手足を無くせばヘビのように見えるスタイルをしたものもいますので、確かに分類学上も遠くないというのも納得のできることかもしれません。
しかし、トカゲの仲間はヘビの仲間以上に形態的な特徴が多岐に渡り、有鱗目の中のトカゲ亜目という大きなグループで見た場合、とても同じ仲間とは思えないほどの違いがあります。
そのような事情もあり、一言で「トカゲというものを説明せよ」という問いに対して簡潔な回答を出すことは難しいものなのです。
よって冒頭のような回答になってしまうことはごく自然なことなのかもしれません。
しかし、種それぞれが形態的に魅力的な特徴を多く持ち合わせており、総論ではなく部分的にトカゲというものを説明していくことは可能です。
以下より、あくまでも部分的な話になってしまいますが、トカゲというものの持つ形態的な特徴をご紹介いたします。
トカゲの眼とまぶた
トカゲの眼は瞳孔が円形もしくは縦長に裂けるように開いており、カメレオンのように眼球が突出し、視野を広く保ちながら左右別々の方向を見ることができるものもいます。
まぶたは下眼瞼と呼ばれ、人間で言うところの下まぶたを下から上に持ち上げるように眼を閉じることができます。下眼瞼に透明な窓をもち、眼を閉じた状態でも視界を確保できるようになっているものも存在します。
トカゲの中でもヤモリの仲間はまぶたを持ちません。そのせいもあり、目がギョロっと大きく見えるのもヤモリ特有の表情と言えるでしょう。
ただ、ややこしいことにヤモリの仲間にも一部まぶたがあるものがおり、そのような仲間を総じてトカゲモドキと呼びます。
トカゲのあごと舌
トカゲの仲間にはヘビとスタイルが似ているものがおり、分類学上でも近い関係にあるとご紹介しましたが、ヘビとトカゲの大きな違い、決定的な違いの一つがあごの構造でしょう。
トカゲはヘビの仲間とは違い下顎の骨が結合している為、極端に大きな餌を丸呑みすることは出来ません。
その為、鋭い歯で餌を噛み切るものや、獲物を振り回したり爪で引き裂くようにし食べるもの、臼のような歯で咀嚼するものなど様々です。
舌は細長く先が二股に分かれたものや、人間と同じように広く平たい舌を持つもの、カメレオンのように伸縮性のある長くて粘着質の舌を持つものなどこれもまた多様性に富んでいます。
ペロペロと舌を出し入れするのは、空気中の化学物質を口蓋にあるヤコブソン器官へ運び、周囲のにおいをより明確に感じるためとされています。
トカゲの耳
トカゲが音を感じ取る耳のような働きをするものを耳孔と呼びます。トカゲの耳孔は側頭部にあり、鼓膜が奥の方にあるものや表面に露出しているもの、または耳孔そのものが皮膚の下に埋もれているものなど様々です。
角状突起
カメレオン科の一部やイグアナ科、アガマ科の一部には、尖った角質や骨質の突起をもつ種が存在します。
繁殖期やテリトリー争いの際に角をぶつけ合う種ではオスの角が発達する傾向が強く、ほとんどの場合、メスには角状突起は存在しません。
トカゲの体色変化
カメレオン科は体色変化を行うことで有名ですが、アガマ科やイグアナ科などでも体色変化は頻繁に行われます。
細胞の収縮によって色彩を変化させますが、意識的に行うものではなく温度差、光の強弱、興奮状態、ストレスなどによって無意識的に行われるものと考えられています。
じわじわと時間をかけて色彩が変わっていくものもいれば、まさに一瞬で劇的な変化を見せるものもいます。
トカゲのしっぽ
長い尾で不安定な樹上においてバランスを取ったり、栄養を溜め込むための貯蔵庫として利用したり、外敵を追い払うための武器として使用したりと、用途は種によっていろいろです。また、指下板のようにスパチュラを尾の一部に持つものもいます。
脊椎骨に自切面と呼ばれる節目を持った種は、外敵に襲われた際に自ら尾を切って逃走する自切行動をとり、自切された尾は筋肉の収縮によりある程度の間はピクピクと動くため、捕食者の意識を集中させることができます。
自切能力を持った種は、尾の再生機能を併せ持っていることがほとんどですが、中には再生しないものもいます。
なお、再生した尾は骨の代わりに軟骨が発達して自重を支えますが、色も形もいびつで違和感があり、社会性を持った集団生活を行う種ではヒエラルキーが下がることもあるようです。
これらがトカゲの形態的特徴の一部です。ザッと触りだけご紹介してもなかなか多様性に富んでいることはご理解いただけたかと思います。
なんだか複雑でややこしい様に思われた方もいるかもしれませんが、この個々の特徴がトカゲの魅力となっていることも事実です。