
ニホンヤモリの繁殖時期はいつ頃?
ニホンヤモリの繁殖行動とは?
ニホンヤモリは飼育環境でも簡単に繁殖できる?
こんなニホンヤモリに繁殖に関する疑問についてご紹介いたします。
ニホンヤモリの繁殖時期はいつ頃?
ニホンヤモリの繁殖は、気温と日照時間が大きく左右します。
日本の本土に生息する個体は、はっきりと季節性を持っています。
本土における主な繁殖シーズン
日本本土では、ほとんどの地域で4月中旬から7月下旬までが繁殖活動の期間です。
特に産卵のピークは5月下旬から6月いっぱいに集中します。
繁殖が始まるきっかけとなる気温
春先に気温が連日20℃を超える日が続くと、メスは体内で卵を成熟させ始めます。
このタイミングでオスも活動が活発になり、夜間の行動範囲が広がります。
地域による開始時期の違い
関東平野ではゴールデンウィークを過ぎたあたりから産卵が始まることが多いです。
静岡や愛知など太平洋側では、4月下旬にはすでに最初の卵が発見されています。
東北地方では5月下旬から6月が中心となります。
北海道では繁殖記録がほとんどなく、まれに7月に卵が見つかっても孵化は困難です。
九州や四国では3月下旬から活動が始まります。
福岡や鹿児島では暖かい年だと、3月中旬にすでに交尾が観察されることもあります。
沖縄の特殊な繁殖パターン
沖縄本島以南では冬でも気温が下がりにくく、ほぼ通年で繁殖が可能です。
ただし12月から2月にかけては産卵数が明らかに減少し、3月から再び増えます。
標高がもたらす時期のズレ
同じ県内でも標高800メートル以上の山間部では、平地より1か月ほど遅れます。
平地が5月にピークを迎える地域でも、山間部では6月下旬から7月が最盛期です。
気候変動による年ごとの変動
春が異常に寒い年は繁殖開始が2~3週間遅れます。
逆に暖冬の翌春は、4月上旬からすでに卵が発見されることも珍しくありません。
まれに起こる秋の二次繁殖
9月下旬から10月上旬にかけて異常な高温が続くと、ごくまれに二次産卵が起こります。
関東や近畿で数例報告されていますが、この時期の卵は寒さで孵化に至ることはほとんどありません。
月別の産卵割合
長年の観察データでは、5月が約25%、6月が45%、7月が20%、4月と8月がそれぞれ5%程度です。
この数字からも、6月が圧倒的なピークであることがはっきりわかります。
つまり、ニホンヤモリの繁殖時期は「春から初夏」と一言で片づけられますが、実際には地域、標高、その年の気候によってかなり幅があります。
どこで観察するかによって、最も出会いやすい時期は大きく変わってくるのです。
ニホンヤモリの繁殖行動とは?
ニホンヤモリの繁殖行動は、他の多くのヤモリと比べると非常に静かで控えめです。
派手な鳴き声もなければ、激しいオス同士の争いもほとんど見られません。
オスの求愛の始まり
オスはメスを見つけるや否や、ゆっくりと距離を詰めます。
急に飛びかかるようなことはせず、まず尾の付け根を小刻みに震わせながら近づきます。
この尾の震わせ方は、ニホンヤモリ特有の求愛サインです。
振幅は小さく、遠目にはただ尾をゆらゆらさせているようにしか見えません。
メスが逃げずにその場に留まっていれば、オスはさらに近づき、体をぴったりと横に並べます。
このとき、オスはメスの体に自分の体を軽く擦りつけるような動作を繰り返します。
首の軽い噛みつきと固定
メスが拒否反応を示さなければ、オスはそっとメスの首の後ろから背中にかけて軽く噛みます。
噛む力は非常に弱く、傷がつくようなことはありません。
この噛みつきは、交尾中のメスの体を安定させるための固定行動です。
メスが嫌がって体をくねらせれば、オスはすぐに口を離して離れていきます。
交尾の様子
交尾は地面や壁面、枝の上など、どこで行われても構いません。
オスはメスの尾の付け根の下に自分の尾を回し、総排泄孔を合わせます。
交尾時間は短いもので30秒程度、長いときでも5分ほどです。
終わるとオスは特に何もせず、そのまま静かに離れていきます。
メスも特別な反応を見せることなく、すぐに普段の行動に戻ります。
交尾後のアフターケアや巣作りへの協力などは一切ありません。
メスの産卵前の行動
交尾後、メスは2~4週間ほどで産卵の準備を整えます。
この期間に食欲が増し、特にカルシウム分の多い餌を好んで食べます。
産卵場所を探すときは、壁の隙間や樹皮の下、岩の裏などを丁寧に調べます。
湿気が適度に保たれ、直射日光が当たらず、温度変化の少ない場所を選びます。
産卵の瞬間
一度に産む卵は必ず2個です。 卵は硬い石灰質の殻に覆われ、大きさは約1センチ程度の楕円形です。
メスは選んだ場所に前足で小さな窪みを作り、そこに卵をそっと置きます。
産み終えると、軽く土や枯れ葉をかぶせるような動作を見せる個体もいます。
産卵後は卵を守ることはなく、そのままその場所を離れます。
シーズン中に体調が良ければ、3~4週間後にまた2個産むということを繰り返します。
オス同士の関係
ニホンヤモリでは縄張り争いがほとんど起こりません。
同じ場所に複数のオスがいても、睨み合う程度で終わり、噛みついたり尾を振り回したりすることは稀です。
メスを巡って直接的な争いが起きることもほとんどなく、先に来たオスが優位に交尾できることが多いです。
後から来たオスは静かに待つか、別のメスを探しに移動します。
こうした穏やかな繁殖行動が、ニホンヤモリが人の住む場所でも静かに暮らしていける理由の一つです。
騒々しい求愛や争いが少ないからこそ、私たちと共存しやすい存在となっているのです。
ニホンヤモリは飼育環境でも簡単に繁殖できる?
ニホンヤモリは飼育下でも繁殖させることが可能です。
ただし「放っておけば勝手に増える」ほど簡単ではありません。
いくつかの条件を丁寧に整えることで、毎年安定した繁殖が期待できます。
ペアの相性が最も重要
野生から捕獲した成体同士を急に同居させても、ほとんど交尾に至りません。
幼体から一緒に飼い始めるか、少なくとも半年以上同じケージで暮らさせておく必要があります。
相性が悪いと、オスがメスを追い回しすぎてストレスを与えたり、逆にメスがオスを完全に拒否したりします。
穏やかに並んで眠れるくらいの関係になれば、ほぼ成功したも同然です。
冬の冷却期間は絶対に必要
11月から3月頃まで、ケージ内の温度を12~18℃に下げます。
この期間は餌を週に1回程度に減らし、光量も短くします。
自然と同じように寒さを体験させることで、メスの卵巣がしっかり発達します。
暖かいまま越冬させると、次のシーズンに卵を作らないことが非常に多いです。
産卵箱の準備が成功率を大きく左右
メスは湿った土やバーミキュライト、水苔の中に卵を産みたがります。
プラスチックケースに深さ5センチ以上の湿らせた基材を入れ、ケージ内に置いておきます。
蓋に小さな穴を開けておくと、中の湿度が保たれつつ通気も確保できます。
産卵箱が気に入ると、メスはそこに何度も卵を産んでくれます。
産卵後の卵の管理
産み落とされた卵は、すぐに別の容器に移します。
温度28~30℃、湿度75~85%を保てる発泡スチロール箱や簡易インキュベーターが便利です。
卵は絶対に回転させないように注意します。
殻が硬いのでカビが生えにくいですが、週に一度は軽く霧吹きして乾燥を防ぎます。
孵化までの日数と温度の関係
28℃前後で管理すると、およそ55~65日で孵化します。
30℃を超えると50日を切ることもありますが、奇形が出やすくなるので避けた方が無難です。
25℃以下に下がると80日以上かかるだけでなく、孵化率も明らかに落ちます。
温度管理が安定しているほど、元気な子どもが生まれてきます。
ベビーの初期飼育が意外な難関
孵化したばかりの子どもは体長3センチにも満たない小さな存在です。
最初の一週間はコオロギの赤ちゃんすら大きすぎて食べられないことがあります。
キイロショウジョウバエや極小サイズのヨーロッパイエコオロギを常備しておきます。
カルシウム剤をしっかり振りかけて与えないと、すぐに足が曲がってしまう個体が出ます。
繁殖サイクルを毎年繰り返すコツ
一度繁殖に成功したペアは、翌年も高い確率で産卵します。
ただしメスは産卵のたびに体力を大きく消耗するので、シーズン中に3回以上産ませない方が長生きします。
2回産んだら産卵箱を撤去し、餌を多めに与えて体力を回復させてあげます。
そうすることで、5年以上にわたって毎年安定した繁殖を楽しむことができます。
条件をしっかり整えれば、ニホンヤモリは確実に飼育下で子孫を残してくれる種類です。
手間はかかりますが、その分孵化したばかりの小さな命を見守る喜びは格別です。