
子供の頃に野原や公園で見かけたことのある方も多いニホントカゲ。
幼体のころの鮮やかな青い尻尾が印象的で飼育を始めた方から「ミルワームを与えているけど、これだけで大丈夫?」という疑問をよく耳にします。
結論から言えば、ミルワームだけでの飼育は栄養面で大きな問題があります。
ミルワームが抱える栄養上の問題
ミルワームはニホントカゲの狩猟本能を刺激し、食いつきが非常に良く、年齢や大きさに関係なく利用できる餌です。
入手しやすく管理も楽なため、飼育者にとって頼りにしがちな存在ですが、それだけに頼り続けると健康に深刻な影響が出てきます。
最大の問題はカルシウムとリンのバランスです。
餌のリンとカルシウムの理想的なバランスは「リン1:カルシウム1.5」とされているのに対し、ミルワームは「リン14:カルシウム1」と圧倒的にリンが過多な状態です。
リンが過多になるとカルシウムの吸収が阻害され、骨格形成に悪影響が出ます。
また、カルシウム含有量が極めて少なく、与えすぎるとカルシウム不足による「くる病」などの疾患を引き起こすリスクがあります。
くる病になると骨が変形し、動きにくくなるなど生活の質を著しく低下させてしまいます。
消化の面でも注意が必要です。
ミルワームの外皮にはキチン質が多く含まれており、爬虫類はこれを消化することができません。
特に脱皮前や蛹(サナギ)状態のものはキチン質の塊になっているため、ほとんど消化されません。
専門家はミルワームを全体の餌の20〜30%以下に抑え、残りは他の栄養価の高い餌で補うことを推奨しています。
一緒に与えると良い餌 コオロギ
コオロギはニホントカゲの主食として非常に適しています。
タンパク質が豊富で、脂肪含量がミルワームよりも低いため肥満のリスクを抑えられ、ビタミンやミネラルのバランスも良く、カルシウム吸収を助ける栄養素も含まれています。
餌用に販売されているコオロギにはフタホシコオロギとヨーロッパイエコオロギの2種類があります。
ヨーロッパイエコオロギは動きは早いですが丈夫で飼育しやすく、フタホシは動きが遅く扱いやすい反面、管理にやや手がかかります。
どちらを選ぶかは入手のしやすさや飼育環境に応じて決めれば問題ありません。
なお、生きたコオロギの管理が難しいと感じる場合は冷凍コオロギも有効です。
冷凍コオロギは高い確率でニホントカゲが食べてくれます。
食いつきが悪いときはピンセットで挟んで動かしてあげると反応を引き出しやすいです。
一緒に与えると良い餌 レッドローチ
レッドローチは見た目は完全にゴキブリですが、コオロギのように鳴いたりせず、匂いも比較的少なく飼育も簡単なため、餌としてはとても使いやすいです。
繁殖スピードも早く、繁殖も簡単に行うことができるため、餌代を抑えたい場合はレッドローチを繁殖させるのも一つの方法です。
なお、同じゴキブリの仲間であるデュビアは体長が大きすぎるため、ニホントカゲの飼育にはあまり向きません。
一緒に与えると良い餌 野外採集の虫
野生下のニホントカゲは主に動いている小さな昆虫や節足動物を捕まえて食べており、バッタやクモ、コオロギ、ミミズ、ハエなどを好んで捕食します。
飼育下でもできる限り野生での食生活に近づけることが健康維持の観点から理想的です。
ワラジムシはカルシウムが豊富で、ダンゴムシと比べるとニホントカゲにとって食べやすいサイズです。
家の周りに普通にいるため採集も簡単です。
ただし個体によって好みに差があり、食べない子もいるため様子を見ながら与えてみましょう。
クモも食いつきが良い餌ですが、入手が難しい点がネックです。
バッタは草むらで手軽に捕まえられるものの農薬がかかっている可能性がある場所では採集を避けるべきです。
一緒に与えると良い餌 人工飼料
ニホントカゲ専用の人工飼料は販売されていないため、ヒョウモントカゲモドキ用の餌を与えます。
ペレットタイプは水でふやかして柔らかくしてから与え、保存できる期間が長いため便利です。
ゲルタイプはそのまま使えて手間が省けますが、冷蔵庫での保管が必要です。
ニホントカゲは釣りができるほど、好きな餌が目の前に現れると食いつく習性があります。
人工飼料もピンセットから食べてくれますが、コオロギほどではありません。
慣れるまで時間がかかる場合もありますが、一度餌付けに成功すると管理が格段に楽になります。
ガットローディングとダスティングで栄養を補う
どの餌を組み合わせるにしてもミルワームを与える際に並行して行いたいのが「ガットローディング」と「ダスティング」です。
ミルワームにカルシウムパウダーを振りかけたり、栄養価の高い餌を事前に与えて育てる「ガットローディング」を行うことで、ある程度の栄養不足を補えます。
しかしこれだけでは多様な栄養素を完全にカバーするのは難しく、他の餌との併用が推奨されます。
幼体のニホントカゲにはカルシウムパウダー(D3入り)を2日に1回、マルチビタミンを週1回与えるとよいでしょう。
幼体は成長が早く代謝率が高いため、頻繁な給餌が必要です。
ミルワームを与える際の量と頻度
成体のニホントカゲには、ミルワームを1回あたり2〜3匹与えるのが適切です。
幼体には1回あたり1〜2匹、1日1回が目安で、ミルワームは全体の餌の20%以下に抑え、他の餌と組み合わせることが推奨されます。
もしも捕まえたニホントカゲが痩せているようであれば、脂肪分が多いミルワームをあげるのが効果的です。
健康なニホントカゲの場合はおやつ程度に与えるのがいいでしょう。
食欲が落ちているときに一時的に嗜好性の高いミルワームで食欲を刺激するという使い方は有効ですが、そのまま常用するのは避けたいところです。
栄養面を考えて、コオロギや野外で採集した虫などをローテーションで与えることが、ニホントカゲを長く健康に育てる基本となります。