
くる病(代謝性骨疾患)とは
ヒョウモントカゲモドキ(レオパ)のくる病は、カルシウム不足によって骨が曲がったり弱くなったりする病気です。
正確には代謝性骨疾患の一種で、カルシウム代謝に異常をきたすことで骨に異常が生じる状態を指します。
原因は様々ですが、最も多いのは食事によるカルシウム不足です。
くる病の初期症状
動きがおかしくなる
レオパのくる病は、まず微妙な行動変化として現れることが多いです。
活動量の減少が初期サインとして最も一般的で、普段は活発に動き回るレオパが隠れ家にこもりがちになったり、いつもより動きが鈍くなったりします。
餌を狩る際の反応速度も遅くなり、獲物を見逃すことも増えてきます。
また、高い場所に登る能力が低下し、以前なら簡単に登れていた飼育ケース内の装飾物に登ろうとしなくなることもあります。
異常な姿勢になる
くる病が進行すると、レオパの姿勢に変化が現れます。
腹部がやや地面につくように低く構えるようになり、背中がわずかに湾曲して見えることがあります。
休息時に四肢をやや広げて体を支えるような姿勢をとることも初期症状の一つです。
正常なレオパは休んでいるときでも、しっかりとした姿勢を保ちますが、くる病の個体は体を地面に沈めるように横たわる傾向があります。
歩き方がおかしくなる
最も注目すべき初期症状は歩行パターンの変化です。
レオパがくる病にかかると、まず歩き方に異常が見られるようになります。
健康なレオパは滑らかで安定した歩行をしますが、くる病の初期段階では微妙にぎこちない歩き方が現れます。
特に後肢に力が入らなくなり、わずかに引きずるような歩き方になることが特徴的です。
方向転換時にバランスを崩しやすくなり、体が揺れるような不安定な動きが見られるようになります。
また、歩行中に途中で立ち止まることが増え、短い距離でも休憩を必要とするようになります。
餌に対する反応の変化が起きる
カルシウム不足が進行すると、餌に対する反応にも変化が現れます。
通常、レオパは餌を見るとすぐに反応して捕食行動を示しますが、くる病の個体は餌を見ても反応が遅くなります。
餌をつかむ動作がぎこちなくなり、何度か失敗してから捕食できるようになることも増えます。
また、餌を飲み込む動作にも時間がかかるようになり、顎の筋力低下によって咀嚼が不十分になる傾向があります。
皮膚と外観の変化が起きる
初期段階では見落としがちですが、皮膚の状態にも変化が現れることがあります。
脱皮のサイクルが乱れ、不完全な脱皮が増えたり、皮膚の光沢が失われたりします。
尾の先端部分がわずかに細くなることもあり、これは代謝の悪化によって栄養が末端まで行き渡らなくなっている兆候です。
レオパがくる病になる原因
レオパなどの夜行性トカゲは、食事からのカルシウム摂取が特に重要です。
昼行性のトカゲはUVB(紫外線B波)によってビタミンD3の活性を高め、カルシウムの吸収を促進していますが、夜行性のレオパは食事由来のカルシウムに依存しています。
そのため、餌へのカルシウム添加(ダスティング)が不足すると、くる病のリスクが高まります。
また、カルシウムに対してリンの比率が高すぎる食事もくる病の原因となります。
リンはカルシウムの吸収を阻害するため、バランスが崩れるとカルシウム不足を引き起こします。
特に重要なのは、カルシウムとリンのバランスで、理想的な比率はおよそ2:1(カルシウム:リン)とされています。
レオパの主食となるコオロギやミルワームには、自然状態でこの理想比率が逆転しており、リンの方が多く含まれています。
そのため、リンがカルシウムと結合して吸収を阻害し、カルシウム利用効率が低下してしまうのです。
くる病の治し方
レオパのくる病を治すためには、適切なカルシウム補給が欠かせません。
エサとなるコオロギやミルワーム等の昆虫にカルシウムパウダーをまぶして与える「ダスティング」を習慣にしましょう。
エキゾテラカルシウムなどの粉末状のサプリメントは、簡単に餌に振りかけることができ効果的です。
また、夜行性のレオパでもビタミンD3の補給は必要です。
夜行性のレオパは、日光浴で紫外線を浴びることでビタミンD3を合成する能力が昼行性トカゲより限定的です。
そのため、食事からのビタミンD3摂取が特に重要になります。
ビタミンD3はカルシウムの腸からの吸収を促進し、骨への沈着を助ける重要な役割を担っています。
このビタミンが不足すると、餌に十分なカルシウムが含まれていても、体内での利用効率が著しく低下します。
ビタミンD3を含むサプリメントを定期的に与えることで、カルシウムの吸収を促進させることができます。

くる病の治療は、早期発見と適切な対応が鍵となります。
初期症状に気づいたら、まずはカルシウムの摂取量を増やすことが重要です。
餌へのカルシウム添加を徹底し、ビタミンD3も併せて補給しましょう。
症状が進行している場合は、爬虫類専門の獣医師に相談することをお勧めします。
専門医による診断と治療計画に従い、適切なサプリメントの投与や飼育環境の改善を行うことで、症状の改善が期待できます。
ただし、骨の変形が重度に進行してしまった場合は、完全に元に戻ることは難しいこともあります。
そのため、日頃からの予防と早期発見が非常に重要なのです。
レオパのくる病治療においては、カルシウムとビタミンD3の適切な量を守ることが大切です。
過剰摂取は別の健康問題を引き起こす可能性があるため、獣医師の指示に従って適量を与えるようにしましょう。
また、くる病の治療後も再発を防ぐために予防措置を継続することが重要です。
定期的な健康チェックと適切な飼育管理を心がけ、少しでも異変に気づいたら迅速に対応することで、レオパの健康を守ることができます。
若いレオパはくる病のリスクが高い
若いレオパは成長が急速なため、骨格形成のためのカルシウム需要が特に高くなります。
この時期のカルシウム不足は、成体よりも急速にくる病を発症させる危険性があります。
子供のレオパは3~6ヶ月齢で最も成長が盛んで、この時期は特に注意が必要です。
産卵を繰り返すメスのレオパも、卵殻形成のためにカルシウム需要が高まるため、くる病のリスクが増加します。
カルシウムサプリメントの使用には計画性が必要です。
若いレオパ(6ヶ月未満)には、餌の昆虫にカルシウムパウダーを毎回の給餌時にまぶし、ビタミンD3を含むマルチビタミンを週に1~2回与えるのが理想的です。
成体(6ヶ月以上)には、与えている餌の種類によっても多少変動しますが、カルシウムパウダーを週に3回程度、マルチビタミンを月に1~2回程度与えます。
産卵期のメスはカルシウム需要が高まるため、通常より頻度を上げてカルシウム補給を行うことが推奨されます。
レオパを健康的に飼育するためには、エキゾテラカルシウムを基本に与え、月1〜2回のペースでカルシウムの吸収を助けるビタミンD3が含まれた「カルシウム+ビタミンD3」を与えるようにすると良いでしょう。

レオパのくる病まとめ
- くる病は代謝性骨疾患の一種で、カルシウム不足やビタミンD3欠乏により骨が軟化・変形する深刻な疾患。
- 初期症状には行動変化、異常な姿勢、ぎこちない歩行、餌に対する反応の遅れなどがあり、早期発見が治療成功の鍵となる。
- レオパは夜行性のため、昼行性トカゲと異なり、餌からのカルシウム摂取が特に重要で、定期的なカルシウムダスティングが不可欠。
- カルシウムとリンのバランスが重要で、理想的な比率は2:1(カルシウム:リン)だが、餌用昆虫は通常この比率が逆転している。
- 若いレオパや産卵中のメスは特にカルシウム需要が高く、くる病リスクが増大するため、追加のカルシウム補給が必要。
- 進行したくる病は完全回復が難しく、骨変形が永続的に残る可能性があるため、予防と早期発見・治療が極めて重要。