
カナヘビは日本の草むらや道ばたでよく見かけるトカゲの一種で、その愛らしい姿から多くの子どもたちに人気があります。
そんなカナヘビですが、自然の中では何を食べているのでしょうか。
カナヘビを飼うには、どのような餌を与えれば良いのか?
この記事では、そんなカナヘビの食性と最適な餌選びについて詳しくご紹介いたします。
カナヘビは自然の中で何を食べている?
カナヘビは野生下では、小さな昆虫類を中心に捕食し、特に体が柔らかい生物を好む傾向があります。
主な獲物としては、コオロギやバッタなどの昆虫や小さな羽虫、クモ類、芋虫、ミミズなどが挙げられます。
これらの生物は動物性タンパク質が豊富で、カナヘビの成長に必要な栄養素を含んでいます。
カナヘビは餌の動きに強く反応し、動いている生物を捕食する本能を持っています。
そのため、じっとしている餌よりも活発に動く餌に対して捕食行動を示す傾向があります。
また、カナヘビの舌は周囲の環境を感知する重要な器官で、匂いを察知して餌を見つける役割も果たしています。
餌として避けるべきもの
カナヘビが苦手とする、または消化できない生物もいくつか存在します。
外殻や甲殻が硬いダンゴムシは、見た目はワラジムシに似ていますが、カナヘビはほとんど食べません。
また、アリも適切なサイズであるにもかかわらず、ほとんど捕食されないことが観察されています。
これはアリに含まれる蟻酸などの化学物質による防御機能が関係しているかもしれません。
カナヘビは基本的に植物質を消化する能力が限られているため、野菜や果物、木の実などを与えてもほぼ栄養源にはなりません。
極端な飢餓状態では、果実などを口にすることがあるという報告もありますが、健康維持には不十分です。
人間用の加工食品(ハムやソーセージ、魚の干物など)は塩分や添加物を含むため、カナヘビの健康を害する恐れがありますので、与えるべきではありません。
カナヘビにおすすめの生き餌
フタホシコオロギ
爬虫類の餌として最も一般的で、多くのホームセンターやオンラインショップで入手可能です。
高タンパク質で栄養バランスも良く、サイズもSM〜Mサイズがカナヘビに適しています。
脱皮したての柔らかいコオロギは特に食いつきが良く、カナヘビが好んで捕食します。
ただし、コオロギ類はカルシウム含有量が少ないため、給餌前にカルシウムパウダーを振りかけるなどの栄養補給が必要です。
コオロギの管理には注意が必要で、適切な温度と湿度を保たないと死んでしまいます。
ヨーロッパイエコオロギ
フタホシコオロギと比べて薄茶色の外観をしており、水切れに強く共食いも少ないため管理が容易です。
個体によってはフタホシコオロギよりも食いつきが良いケースもあります。
レッドローチ
学名はトルキスタンゴキブリで、中央アジアのトルキスタン地方が原産です。
コオロギと同様に栄養価が高く、飼育ケースを登れないため脱走の心配が少ないのが利点です。
丈夫で共食いも少なく、鳴き声もないことから管理のしやすさでは優れています。
「ゴキブリ」という名前に抵抗がある方もいるかもしれませんが、爬虫類飼育者の間では人気の高い餌です。
クモ類
徘徊型の小さなクモ(コモリグモ・カニグモ・エビグモなど)はカナヘビの大好物です。
動物性タンパク質に加え、豊富なミネラルも含まれており、栄養価は非常に高いです。
ほぼすべてのカナヘビがクモに対して強い食いつきを示し、拒否されることはほとんどありません。
しかし、残念ながら市販されていないため、春から秋にかけて自然界で捕獲する必要があり、調達の難易度が高いのが欠点です。
ワラジムシ
「歩くカルシウム」の異名を持ち、爬虫類飼育者の間で重宝されています。
特に「ホソワラジムシ」は甲殻が柔らかくカナヘビが食べやすいです。
カルシウム含有量が高く、ケース内で繁殖させることも可能で管理が容易です。
ただし、個体によっては嗜好性が低く、食べてくれないカナヘビもいます。
ミルワーム
ゴミムシダマシ科の甲虫の幼虫で、入手しやすく保管も簡単です。
多くのカナヘビが好んで食べますが、脂肪分とリンの含有量が多くカルシウムが少ないという栄養的な問題があります。
長期間主食として与え続けるとクル病などの栄養障害を引き起こす恐れがあるため、補助的な餌として使用するのが望ましいです。
拒食時の応急処置や一時的な餌としての使用に留めましょう。
カナヘビは人工餌も食べる
近年では、生き餌の調達や管理に苦手意識を持つ飼育者向けに、様々な人工餌が開発されています。
レオパブレンドフード
アメリカミズアブの幼虫を主原料としたペレットタイプの人工飼料です。
爬虫類の成長に必要なカルシウムを豊富に含み、水またはお湯でふやかして与えます。
レオパードゲッコー向けに開発されていますが、同じく昆虫食のカナヘビにも適しています。
レオパドライ
ミルワームを主原料としたペレットタイプの人工餌で、「ヒカリ菌」という腸内細菌を活性化させる菌が配合されています。
その働きにより消化機能が改善され、糞の臭いも軽減されるという効果があります。
ペレットをふやかして与える際の柔らかさは、カナヘビの好みに合わせて調整するとよいでしょう。
バグプレミアム

アメリカミズアブの幼虫をそのまま乾燥させたドライフードです。
乾いた状態では食べにくい個体もいるため、必要に応じてお湯でふやかして香りを引き立てると食いつきが向上します。
カルシウムとリンのバランスが良く、栄養価の高い餌として知られています。
レオバイト

コオロギパウダーを95%含む練り餌タイプの人工エサです。
水で団子状にして与えるため、カナヘビの好みのサイズや硬さに調整できます。
他の人工餌を拒否する個体でも受け入れることが多く、食いつきの良さでは優れています。
手が汚れるというデメリットはありますが、長期保存が可能で栄養価も高いため、おすすめの選択肢です。
人工餌に慣らす効果的な方法
カナヘビは生まれながらに動く生物を捕食する本能を持っているため、動かない人工餌を食べさせるには工夫が必要です。
置き餌の活用
人間やピンセットを怖がる個体には、小さく切ったスポンジを湿らせ、その上に人工餌を置く方法が効果的です。
これにより、カナヘビは人の干渉なく自分のペースで餌に接近して食べることができます。
ただし、放置時間は6時間以内に留め、食べ残しは悪臭やカビの発生を防ぐために速やかに除去しましょう。
口周りへ付着させる
人工餌を食べ物として認識していない個体には、ふやかした人工餌を口の周りに少量付着させる方法が効果的です。
カナヘビは違和感から舌でなめ取り、その過程で味を覚えて徐々に食べるようになることがあります。
この方法は根気強く数日間続けることが重要で、ある日突然パクっと食べ始めることもあります。
複数種類のローテーションを行う
カナヘビにも個体ごとの好みがあります。
一種類の人工餌を拒否しても、別の種類なら食べることもあるため、複数の人工餌を用意してローテーションで与えると効果的です。
この方法は栄養バランスも改善され、飽きによる拒食も防止できます。
生き餌からの段階的な移行
急に生き餌から人工餌に切り替えるのではなく、徐々に比率を変えていく方法も効果的です。
最初は生き餌と人工餌を混ぜて与え、少しずつ人工餌の割合を増やしていきます。
この方法では、カナヘビが人工餌の味と香りに徐々に慣れることができます。
関連記事
-
-
カナヘビは人工餌だけでも飼育できる?上手な人工フードの食べさせ方とおすすめの人工餌とは?
2025/1/26 カナヘビの餌
カナヘビは人工餌だけでも飼育できる? カナヘビの人工餌のあげかたは?置き餌で大丈夫? カナヘビを人工餌に慣れさせる方法とは? カナヘビの人工餌のおすすめは? こんなカナヘビの人工餌に関する疑問について …
季節による餌の変化
カナヘビは変温動物であるため、季節によって活動量や食欲が変化します。
春から夏の給餌
最も活発に活動する時期で、食欲も旺盛です。
成体でも2〜3日に1回、幼体は毎日の給餌が適しており、多様な餌を与えることでバランスの良い栄養摂取が可能です。
バスキング(日光浴)の機会も十分に提供し、消化を促進させましょう。
秋の給餌と冬眠準備
気温が下がり始めると、カナヘビは自然と食欲が減退し、冬眠に向けた準備を始めます。
この時期は給餌頻度を徐々に減らし、体内に適切な栄養を蓄えさせることが重要です。
過剰な餌は消化不良を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
冬眠期の管理
室内飼育では自然の冬眠サイクルを完全に再現するのは難しいですが、気温の低下に応じて給餌を調整すべきです。
暖房の効いた部屋で飼育している場合でも、日照時間の減少によりカナヘビの代謝は自然と低下します。
この時期は餌の量と頻度を減らし、カナヘビの様子を見ながら調整することが大切です。
関連記事
-
-
カナヘビの餌は家にあるもので代用できる?何を与えるのがベスト?入手方法は?
2025/1/26 カナヘビの餌
ニホンカナヘビの餌は家にあるもので代用できる? ニホンカナヘビは野菜を食べる? カナヘビの餌を家にあるもので代用すると起こる問題とは? カナヘビのご飯は何を与えるのがベスト? カナヘビの餌はどこで入手 …
-
-
カナヘビのカルシウム不足とは?カルシウムが豊富な餌やカルシウムパウダーの与え方
2025/1/26 カナヘビ
カナヘビがカルシウム不足になるとどうなる? 野生のカナヘビもカルシウムを摂取している? カルシウムが豊富なカナヘビの餌とは? カナヘビに与えるカルシウムパウダーの作り方と与え方とは? カナヘビにカルシ …
-
-
カナヘビの餌はホームセンターやダイソーで買える?餌を売っている場所はどこ?
カナヘビの餌はホームセンターやダイソーでも買える? カナヘビの餌を売っている場所はペットショップ? カナヘビの餌は通販で購入するのがベスト?その理由は? こんなカナヘビの餌の入手に関する疑問についてご …
カナヘビの食べ物まとめ
- カナヘビは完全な肉食動物で、野生では小さな昆虫やクモなどの柔らかい生物を捕食している。
- 最適な生き餌はコオロギ類、レッドローチ、クモ類で、ワラジムシはカルシウムが豊富で「歩くカルシウム」とも呼ばれている。
- ミルワームは入手しやすく食いつきは良いが、脂肪分とリンが多くカルシウムが少ないため主食には向かない。
- 人工餌(レオパブレンドフード、レオバイトなど)は栄養バランスが良く長期保存が可能ですが、カナヘビに慣れさせるには工夫と時間が必要。
- 給餌頻度は成体で2〜3日に1回、幼体は毎日が適切で、適量はMサイズコオロギ2〜3匹程度が目安。
- カナヘビが餌を食べない原因として、環境ストレス、エサのサイズ不適合、同じ餌による飽き、低温、口内炎などが考えられる。
- バスキング(日光浴)環境を整えることはカナヘビの消化を助け、健康維持に重要な役割を果たす。